IKKON STYLE
鈴木酒造店長井蔵鈴木大介さん
2018.08.02
鈴木酒造店長井蔵、鈴木大介社長に聞く、IKKONの楽しみ方 第2回
酒蔵の視点から、IKKONと日本酒について語っていただく3回シリーズの第2回です。
鈴木酒造店長井蔵の代表取締役であり、自ら杜氏として日本酒を醸す鈴木大介さんによる、奥が深い日本酒と器のお話を、引き続きお楽しみください。
―器の色とお酒の色はどうですか?IKKONぐいのみは白、青磁、黒の3種類ありますが。
酒の色を見るには、やはり白っぽい方がいいですね。日本酒は、ワインのように色そのものを楽しむイメージは少ないかもしれませんが、たとえば吟醸系なら輝くような「きらめき感」や「照り」というのがあるのです。また、酒は新酒の青冴えた色から、熟成により琥珀色へとなっていきます。色から酒の情報は結構得られるものです。お酒は白磁系もしくはガラスの酒器に注いで、視覚的にも楽しんでほしいと思います。
―面白いですね!金属の種類でそれほど違うとは。さて、お燗といえば、今と違って昔は日本酒はお燗で飲むのが普通でしたね。
ええ。自分も子供のころ、法事などで親族が集まると、でっかい鍋に徳利を何十本も入れてお燗をつけるのを手伝った記憶があります。
―酒器の材質も気にした方がいいですか?
面白いですね!金属の種類でそれほど違うとは。さて、お燗といえば、今と違って昔は日本酒はお燗で飲むのが普通でしたね。
―そのころ、「男は辛口」といったイメージもあったように記憶しますが。
日本酒の辛口は妄想ですよ(笑)。一般にアルコールが強いのを「辛い」と感じるようですが、辛口の酒であっても原料である米由来の甘味を感じるものです。昔、ある程度格式の高い料理屋さんにはお燗番がいました。お客さんが日本酒を飲み始めると、同じお酒を最初ぬる燗から始めて少しずつ熱くしていき、最後の締めは熱燗で出すわけです。この熱燗のときにキレがあることが良い酒で、男が集う酒場というちょっと特殊な閉鎖空間で、熱燗のときのキレが「辛口」の表現として定着して、形を変えて信仰されていったのではないか、と私は考えています。
―でも、「日本酒度」が高いと「辛い」のでは?
日本酒度のプラスマイナスは、酒の比重を表すものです。麹の酵素の働きでデンプンが糖になり、酵母が糖をアルコールと炭酸ガスに変えます。糖化作用とアルコール発酵が同時に起きているのが清酒モロミの特長であり、その温度管理が微妙なのですが、最初は糖化作用が優勢で比重は重く、次第に酵母の増殖によりアルコール発酵が盛んになり比重が軽くなる。つまり、酒の比重が軽い=日本酒度のプラスが高いほどアルコールが多くエキス分が少ない、すなわち甘味成分が少ないので、それを日本酒度では「辛い」と表現するわけです。ただし、これはアルコール度数とはまた別です。
また、味というのは甘味・塩味だけでなく、酸味や苦味、旨味も組み合わさったものだというのはご存知でしょう。たとえば、酸味が強いと甘味が打ち消されて辛く感じるんですよ。逆に、苦みは甘味で打ち消すことができたりします。
―なるほど、辛い・甘いという単純な話ではないのですね。でも舌が鈍いとよくわかりませんが…
最近、現代人の味覚が単純化されているように感じます。味付けの濃いものばかり食べているからでしょうね。私は福島県浪江町の港町・請戸(うけど)で生まれ育ちましたが、塩蔵品以外はすべて薄味でした。どんな素材も新鮮だったので、味付けは最小限で良かったのです。
―それは最高の贅沢ですね。味覚は成人してからでもある程度訓練できるとはいえ、生まれ育った環境の影響は大きそうですね。
鈴木酒造店
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IKKONが採用する二重焼きは、福島県浪江町の伝統的工芸品、大堀相馬焼の特徴でもあります。同じ浪江町の請戸(うけど)地区にあった鈴木酒造店(本蔵)は、東日本大震災の津波で全建屋が流出し、続く原発事故で休業を余儀なくされました。鈴木さん一家は山形県長井市に移り、現地で長い歴史を持つ東洋酒造の全株式を取得、2011年12月より「鈴木酒造店長井蔵」と名称を変更して酒造りを再開しました。永らく浪江町で愛されてきた「磐城壽」、そして東洋酒造から引き継いだ「一生幸福」を主要銘柄としています。