IKKON STYLE

「燗酒ノ城」店主前田洋志さん

2019.11.17

「燗酒ノ城」店主、前田洋志氏に聞く IKKONで楽しむ燗酒の世界(第2回)

IKKON SAKE WARMER(陶製の卓上酒燗器)とともに味わう燗酒の世界。全国から燗酒ファンが訪れる福島市の居酒屋、「燗酒ノ城」店主の前田洋志氏に語っていただくシリーズ第2回です。


「燗酒ノ城」店主 前田洋志さん

徳島県生まれ。子供のころから身近に日本酒がある環境で育つ。一度は企業に就職するも、日本酒好きが高じて酒造りの世界へ。京都や鳥取、三重、東京などで通算10年ほど蔵人としての道を歩む中で、あらためて燗酒のすばらしさに開眼。その後、作り手ではなく売り手として日本酒業界に貢献できる道を選び、長年の夢だった自分の店を持つことに。2016年9月、奥様のご実家のある福島県福島市にて「燗酒ノ城」を開業。


 

 

お燗の温度の選び方は?

 

 

――さて、ここからは前田さんに燗のつけ方を教えていただきたいと思います。

 

お燗は温度によって、日向燗、人肌燗、ぬる燗、上燗、熱燗などの段階がありますね。体温と同じ35度くらいから最高では70度くらい。80度を超えるとアルコールが飛んでしまいます。

 

燗をつけるときは湯せんが基本。全体が均一にじわじわと温まるからです。電子レンジは使いません。レンジで温めると局所的に分子が振動してアルコールが揮発してしまい、それがすぐ冷やされてお酒の中に落ちて再液化するので、不味くなるのです。

 

お店では湯をはった「燗どうこ」の中に、酒を入れた錫(すず)製のちろりを入れて適温まで温め、徳利に移し替えてお出しします。錫は熱伝導率がいいので温まるのが速く、またイオン効果で中に入れた液体がまろやかになります。酒だけでなくウーロン茶なども、錫を通しただけで味がソフトになるんですよ。それが錫のいいところですね。他の素材のちろりもありますが、特にアルミ製のものは金っ気が出てしまうので、あまりよくないと思います。

 

 

――お店では卓上酒燗器IKKON SAKE WARMERもお試しいただいていますが、いかがですか?

 

たとえば同じ40度のぬる燗でも、湯せん器をアツアツの設定にして40度まで上がったらすぐ出すのではおいしくありません。じわじわと温めたほうが断然まろやかでおいしくなります。IKKONなら卓上でそれができるのがいいですね。

 

こういう陶器製の卓上酒燗器は他にもありますが、IKKONは二重構造になっているので保温性がいい。ゆっくりつかり、味が柔らかくなるのが一番の特徴です。ただ、卓上だと上げられる温度に限界がありますから、30~50度くらいの中温でおいしいお酒が合うでしょう。

 

――お酒の銘柄によって燗の温度は変えるのですか?

 

お酒の味に合わせるだけでなく、飲む順番によっても変えたりしますよ。お客様のお好みにもよりますが、飲み始めはあまりアツアツでなく優しい感じがいいでしょう。同じお酒をおかわりされたときは、3~5度高くして出すこともあります。上げると味がまたすっとキレますから。

 

また、今日開栓したお酒と1週間前に開けたものでも違います。開けたてのお酒は固いので、燗は柔らかめに。それから、おつまみとお燗の温度も関係がありますよ。一口食べて、その後に酒を口に含んだときの広がり方が温度によって違いますから、お互いの味が変わるのです。完璧に料理と合わせたいときは、お酒をブレンドすることもあります。

 

IKKONで飲んでいるところ

 

――違う銘柄同士を混ぜるのですか?!

 

ええ、メインの酒に別の酒をちょっと足したりしますね。ただ、専門店としてはそうした知識も蓄積していかないといけませんが、食べ物と酒のマッチングを完璧に追求しようとすると、あまりに細かすぎてつまらなくなりますから(笑)。日本酒は守備範囲が広いので、一般的にはそこまで求めなくても十分楽しめると思います。

 

うちのメニューは和食が中心です。北海道から九州までいろいろな場所の食材を使っていますが、ぜひ出汁そのものの味を楽しんでいただきたいと思っています。この出汁をチェイサーとして燗酒と一緒に召し上がると、最高においしいですよ。

 

(つづく)

 

 

[聞き手=松永武士、文・写真=中川雅美]