IKKON STYLE
「燗酒ノ城」店主前田洋志さん
2019.12.16
「燗酒ノ城」店主、前田洋志氏に聞く IKKONで楽しむ燗酒の世界(第3回)
IKKON SAKE WARMER(陶製の卓上酒燗器)とともに味わう燗酒の世界。全国から燗酒ファンが訪れる福島市の居酒屋、「燗酒ノ城」店主の前田洋志氏に語っていただくシリーズ第3回です。
「燗酒ノ城」店主 前田洋志さん
徳島県生まれ。子供のころから身近に日本酒がある環境で育つ。一度は企業に就職するも、日本酒好きが高じて酒造りの世界へ。京都や鳥取、三重、東京などで通算10年ほど蔵人としての道を歩む中で、あらためて燗酒のすばらしさに開眼。その後、作り手ではなく売り手として日本酒業界に貢献できる道を選び、長年の夢だった自分の店を持つことに。2016年9月、奥様のご実家のある福島県福島市にて「燗酒ノ城」を開業。
実際にIKKONで飲み比べ!
――では、ここから実際にIKKON SAKE WARMERで燗酒を飲んでみたいと思います。お酒のご紹介の前に、まずご用意いただいたのはお猪口ではなく盃ですね。
盃は口に入ってくるときの滑りがいいんです。それも肉が薄ければ薄いほどよく、縁がちょっと開いているチューリップ形だとなおいい。さらに滑りがよくなりますから。
――なるほど。そして、今回セレクトいただいた銘柄はすべて純米酒ですね。
今日はこの3本を用意しました。
- 山廃特別純米酒「るみ子のお酒」 森喜酒造場(三重県)
- 純米酒「真穂人」 神亀酒造(埼玉県)
- 純米酒「磐城壽 そらみずつち」 鈴木酒造店(山形県)
うちの店はほとんどが純米酒です。醸造アルコールが入っていると、お燗したときそのアルコールが鼻についてしまうのです。それに、純米酒というのは作り手のごまかしがききません。そうやって勝負している蔵の酒を飲んであげたいと思う気持ちもありますね。
では1本目「るみ子のお酒」を開けましょう。森喜るみ子さんという女性杜氏が醸した味わい深いお酒で、ラベルは漫画『夏子の酒』で有名な尾瀬あきら氏が描いています。まずは常温でお試しください。
――このままでも飲みやすくておいしいですが、これがお燗になるとどう変わるのか、楽しみです。
IKKON SAKE WARMER の湯せん器に沸騰したてのお湯を内側の線まで注ぎ、そこへお酒を入れたちろりを静かにおさめます。差した酒温計の針がみるみる上がっていき、1分で40度以上に。2分で50度に達したところで、前田さんと共にいただいてみます。
――熱燗の温度になりましたね。かなりシャープになったように感じます。
常温と比べると、だいぶ酸が浮き立ってきていますね。でも、この酒ならもう少し温度を上げてもいいかな。酸が際立ってくると、人間はなにか食べたくなってくるんです。逆に、お酒が甘いと満腹中枢が「もういいよ」と言ってしまうので食事が進みにくくなります。
5分経過すると55度まで上昇。そこから徐々に下がり始めましたが、10分後でも50度を維持しています。
――それほど温度が下がらないのは二重焼きだからですね。
そうですね。こうやってゆっくり下がるのがいい。IKKONのもうひとつの楽しみ方は、いったん上がった温度から徐々に下がっていく過程で変化を味わえることです。温度が下がっておいしくなる酒もあるんですよ。
――次は神亀ですか。
埼玉県蓮田市にある純米づくりの酒造店で、燗酒を盛り上げた元祖的な蔵といえます。酒瓶の首かけタグに、「このお酒は35歳以上の人生の機微がわかる方に飲んでほしい」と書いてあるんですよ(笑)。このお酒はそれほど温度を上げなくていいかもしれません。
今回は、沸騰していないお湯を入れたところ、2分で40度、3分で55度まで上昇しました。それぞれの温度で試飲してみます。
――昔ながらの気骨のある日本酒といった味がします。
45度くらいで香りが立ってきましたね。これは醤油、味噌、豚肉など、それから土の香りのする根菜などにも合います。55度だとかなりキレてきました。普段はもうすこし柔らかく50度くらいでお出しすることが多いですが、油っこいものと一緒なら55度でもいいでしょう。
――日本酒度は+7ですから、かなり「辛口」ですね。
一般に日本酒度が高い(プラスの値が大きい)と(糖度は低く)味は軽くなっていきますが、このタイプのお酒は糖度を残すかわりに熟成させることで味の厚みを出しています。一般に、お燗には(しぼりたてでなく)2~3年熟成したお酒の方が向きますね。60度くらい熱めにつけてから50~45度まで落として、燗冷ましで飲むと実においしいですよ。盃に残った燗冷ましもうまい!(笑)
(つづく)
[聞き手=松永武士、文・写真=中川雅美]